ねじれ国会“待ったなし”
税制関連法案、日銀総裁人事・・・
朝青龍が4場所ぶり22回目の優勝で、大相撲春場所は幕を閉じた。初場所はモンゴル出身の後輩横綱・白鵬に遅れをとったが、今場所は“強い”朝青龍が戻ってきた。日本の国技とはいえ、しばらくは“青・白”2強時代が続くだろう。
相撲は一瞬の勝負。しかし、その一瞬でも互いの力と力がぶつかりあっている。直系4.55メートルの土俵だが、東西南北の四方にある「徳俵」に救われて、逆転する場面も相撲の醍醐味だ。
一方、国会の与野党の攻防は一進一退を繰り返している。
1月末。いわゆる「つなぎ法案」を与党が国会提出し、野党を追い詰めた。この法案が成立すると、3月末に期限切れの道路特定財源をはじめとする暫定税率が、実質的に延長される。野党の攻め手が無くなってしまうところだった。だが、「議長あっせん」という「徳俵」で残った。
仕切り直しとなった2月末。再び与党が攻勢に出て、予算案と税制関連法案を衆議院で通過させた。ところが舞台が参議院の“土俵”に移ると攻守逆転。日銀総裁人事は2度にわたって不同意となって、与党側は土俵際まで追い詰められてしまった。
ただ、今回の日銀総裁の人事に対する民主党の反対理由は、どうも理解しづらい。総裁候補となった武藤、田波両氏とも財務省の事務次官を務めたから“財金分離”に反するという。しかし、財務省出身だからといって、日銀の独立性が揺らいでしまうのか。
先日、NHKの日曜討論に出演したとき、私は次のように述べた。民主党の出演者は同党の税制調査会長を務める藤井裕久氏。「藤井さんは(旧)大蔵省出身で、大蔵大臣まで務めた。だからといって、財務省から影響を受けているわけではない。人間の問題であって、出身の問題ではない」
日銀総裁は空白のまま、白川副総裁がしばらく代行することになった。これから一週間、国会の“土俵”は税制関連法案が年度内成立するかどうかの攻防戦だ。ここは、与野党どちらが押し切るかという単純な話ではない。国民生活に直結する重要な問題だ。
ぶつかり合いだけでなく知恵の出し合いを
“政局”に絡めたり、与野党互いのメンツにこだわることなく、修正協議をして結論を得るべきだと思う。双方が智恵を出し合い、一歩ずつでも国政を前進させることが大切ではないか。
春場所のテレビ桟敷は熱狂したが、“ねじれ国会”の土俵を見守る国民は、与野党の単純なぶつかり合いではなく、智恵の出し合いを期待している。
(平成20年3月25日付 夕刊フジより転載)