賞味期限切れの菅内閣
―失態につぐ失態―
「民主党の作戦?。次から次へと問題を起こして、逆に追及できなくしてるんじゃない」
今年、20歳になった大学生の長男が私に質問してきた。
「う~ん。それが作戦だったら、高等戦術だな」
民主党代表選で菅首相が再選し、内閣改造してスタートした臨時国会が3日、閉会した。64日間の会期を振り返ってみると、冒頭の長男の言葉も「なるほど」と思ってしまうほどだった。
まず臨時国会の初めに問題となったのは「尖閣問題」。公務執行妨害容疑で逮捕した中国人船長を釈放したものの、それは検察の判断と仙谷官房長官は主張。その後、中国漁船の衝突ビデオを非公開としながら、そのビデオがネット上に流出するという失態。
日中関係がギクシャクしている間に、今度はロシア大統領が北方領土の国後島を訪問。菅内閣の外交上の対応のまずさを露呈した。
さらにAPECでは、中国の胡錦濤国家主席との会談に固執した菅首相。ようやく実現した会談ではメモを見ながら話し、「この国の外交は大丈夫か」という印象を多くの国民が持ってしまった。
北朝鮮の砲撃事件では発生直後に官邸に政治家が居なかった。この“空白の70分”を野党から追及され、内閣の危機管理に不安が募った。
柳田前法相の失言にもあきれてしまう。実質的な更迭で決着をみたが、仙谷官房長官の自衛隊に対する「暴力装置」発言など、言葉に対する緊張感に欠ける政府・与党。
国会終盤では、国会開設120周年式典における、中井衆院予算委員長の秋篠宮ご夫妻に対する野次(?)問題も起きた。
「政治とカネ」に目を転じると、企業団体献金の禁止をマニフェストに掲げた民主党だったが、自粛を解禁。「クリーンな民主党」はどこへ行ってしまったか。さらに小沢元代表の国会召致問題も棚ざらしにしたまま国会は閉会した。
それらの結果、内閣支持率は急降下をたどり、マスコミ各社の調査は軒並み「危険水域」の20%台になってしまった。
―国民も「こんなはずでは・・・」―
「こんなはずじゃなかった」
昨年の衆院選で民主党に投票した多くの有権者はそう思っているかもしれない。
これから年末にかけての来年度予算案の編成作業が行われる。既に“迷走”しているようだが、政府・与党のミスはそのまま国民生活に影響するという自覚がなさすぎる。
菅内閣もそろそろ賞味期限が切れてきたかもしれない。
(平成22年12月8日付 「夕刊フジ」より転載)