連載27 教育改革の前途は険しい


 
 
教育改革の前途は険しい
 
 
 
 
「いじめ」「自殺」別問題も
 
 衆院本会議の開会を告げるベルが鳴った。与党席はうまっていくが、野党席はガラガラのまま。
 
 16日午後1時、ベルが鳴り止み、河野衆院議長が入ってきた。開会を宣言し、約30分後、教育基本法改正案が可決され、衆院を通過した。
 
 前日の衆院教育基本法特別委員会も、野党は採決を欠席していた。野党は「審議が尽されていない」と主張するが、これまで政府案、民主案の2つの法案を一緒に106時間も審議してきた。後半は与野党とも重複する質問も目立ってきた。答弁をする民主党議員が「すでに申し上げたことですが…」と話す場面も。
 
 野党側の要求で、中央公聴会や全国6カ所の地方公聴会も開催。参考人質疑も計4回行った。
 
 タウンミーティングの「やらせ質問」や「いじめ」「自殺」も採決反対の理由に挙げているが、読売新聞社説(16日付)は「こじつけが過ぎるのではないか」と、切り捨てている。
 
 もちろん「やらせ質問」はとんでもない。「いじめ」「自殺」も深刻な問題だ。だが、教育の骨格、理念法である教育基本法の改正と個別の問題は混同してはならない。実際、15日には文部科学委員会でいじめ問題を審議。今後も常任委員会である文科委員会で議論を進めればいいはずだ。
 
 一方、民主党は対案を出していながら、自らの法案の採決まで拒否した。「いじめ」「自殺」「やらせ質問」が改正案にかかわるなら、自分たちの法案の中身で勝負すべきではないか。
 
 結局は、19日に行われた沖縄県知事選のために、社民、共産との野党共闘を優先したと思われても仕方あるまい。つまり、国会が混乱し、政局絡みになればそれでよし、というのが本音ではないのか。
 
 民主党案には、社民、共産は反対していた。政府、民主両案の採決に参加すれば、社民、共産との共闘も崩れる可能性があった。  

 
現場離れ教師ら「座り込み」
 
 本会議採決の行われた日、国会裏の議員会館前で日教組の人たちが「ハンターイ!」と拡声器で叫んでいた。法案の審議中、全国から組合の人たちが上京。歩道上で座り込み(中には寝転がっていた人もいた)を続け、一般の人の通行の邪魔になっていた。
 
 
 
 自らの信条を訴えるのはいいが、今、教育現場はまさに「いじめ」「自殺」で大変だ。職場を離れ、座り込みを続ける教師を見ながら、教育改革の前途は険しいと痛感した。    
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成18年11月21日付 夕刊フジより転載)
 
 

2017年02月20日