連載26 日本人の「働き方」を考える



 
日本人の「働き方」を考える
 
 
 
 
 
働き盛り世代に必要な「趣味の時間」
 
 秋の褒章が先日、発表された。学術・芸術・スポーツ分野で功績のあった人を対象とする紫綬褒章には、落語家の桂三枝さんや俳優の津川雅彦さん、作詞家の阿木燿子さんなどが選ばれた。
 
 新聞に掲載された受章者一覧を見てみると、映画監督の小栗康平さんも受章していた。映画ファンの一人としては懐かしさとともに、少々うれしくもあった。
 
 彼のデビュー作は昭和56年、芥川賞作家・宮本輝さん原作の「泥の河」。30年代前半の大阪・安冶川を舞台に、貧しくも懸命に生きる人々を幼い少年の視点から描いた作品だった。
 
 モノクロの映像がカラーに慣れた視覚に新鮮に映ったのを覚えている。当時、大学生だった私は、この作品をきっかけに映画にのめり込んでいった。
 
 マスコミを志望しながらも入社試験に落ち、就職浪人をしていた時期。塾の講師や運送会社、プールの監視員などさまざまなアルバイトをしながらも、映画館に足を運んでいった。映画のとりこになって年間150本を映画館で見た。
 
 その後、新聞記者を経て、議員になって13年。選挙の時の候補者アンケートにも趣味は「映画」と書きたいところだが、そうもいかない。
 
 議員になってからというもの、映画館が遠くなった。たまに自宅で話題になったDVDを見るくらい。仕事に追われている日々だ。

 
これも政治の仕事
 
 40歳代のサラリーマンで、学生時代の趣味を続けている人はどのくらいいるだろうか。働き盛りの世代は、どうしても仕事優先になりがちだ。中には、仕事とプライベートをしっかり立て分けている人もいる。
 
 だが、通勤電車に乗っている同世代のサラリーマンを見ると、やはり趣味というより、仕事に疲れた顔をしている人が多いと感じる。
 
 景気が良くても、悪くても、働き者のサラリーマンがいるからこそ、日本経済が成り立っているのは確かだ。
 
 しかし、働き盛りの世代が「趣味」の時間をもっと持てるようになれば、職場はもっと活性化するのではないか。
 
 もちろん、個人や会社の問題かもしれないが、日本人の「働き方」を考えることも、「政治の仕事かな」と、ふと思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成18年11月7日付 夕刊フジより転載)
 
 

2017年02月20日