与党、野党の垣根越え「感謝」の心で危機対応
箱根駅伝で再認識
スポーツは筋書きの無いドラマだとよく言われる。今年の“箱根駅伝”は、そんな思いを強くした。
昨年秋の“リーマン・ショック”以来、世界経済が混迷。不景気を反映して自宅で年末年始を過ごした人も多かったのではないか。
そのような中、2日・3日の正月恒例の“箱根駅伝”は世の中の「暗さ」を吹き飛ばすような爽快感を与えてくれた。
往路を走る2日。毎年、JR新宿駅で行う党の街頭演説会に臨むため、東京・大手町のスタートを自宅のテレビで見ることができない。だが、今年は携帯電話のワンセグで移動しながら観戦した。
5区山登りでは東洋大の1年生・柏原が「山の神」と呼ばれた今井正人(順大)の記録を破った上、8人抜きで往路優勝に貢献。
2区ではダニエル(日大)が20人抜き、モグス(山梨学院大)が2年連続区間新を記録した。
北京五輪代表の早大のエース・竹沢も3区で区間新を達成するなど、翌日の新聞にはエピソードが満載だった。
圧巻は復路。優勝候補筆頭の駒大が沈み、一昨年優勝の順大が途中棄権を除けば、47年ぶりのシード落ち。
一方、明大が43年ぶりにシード権を獲得。往復200キロを越え11時間以上走って、4位から12位までが1分29秒差でゴールするというシード権争いも目が離せなかった。
見事だったのは67回目の出場にして初の総合優勝を飾った東洋大。
昨年12月、部員の不祥事で一時は出場も危ぶまれた。しかも、今回出場した10人のうち全国主要大会に出場したのは1人という。まさに雑草軍団の優勝だった。
優勝後の胴上げもなく、走ってきた道に対して部員が並んで一礼をしていた。アンカーの高見のコメントがよかった。「支えてきてくれた皆さんに感謝の気持ちを持って走りました」
絶対的なエースがいたとしても、優勝するとは限らない。10人の選手、いやそれを支える人たちの力が結集して、駅伝が成立する。これが駅伝のおもしろさだ。
政治も同じことが言えるのではないか。5日からスタートした通常国会。麻生内閣の試練は続くが、“エース・麻生”の独り相撲ではなく、与党も野党も越えて全ての人の力を結集できるかどうか。
百年に一度の危機と言われる時だからこそ、あらゆる力を結集する度量が、今の内閣に求められている。
アンカーの言葉のように「感謝」しながら、求心力を高めていくべきではないだろうか。
(平成21年1月7日付 夕刊フジより転載)