「再仕分け」政治主導とほど遠く
―概算要求した長妻氏が“仕分け人”とは・・・―
「何をやってんだろう」という気分になる。
政府の行政刷新会議は15日、事業仕分け第3弾の後半にあたる「再仕分け」をスタートさせた。
政権交代後の昨年11月に行われた事業仕分け。
「2番じゃダメなんですか―」蓮舫行政刷新担当相の厳しい追及には若干の批判があったものの、税金のムダ遣いにメスが入ったことに多くの国民は拍手喝采した。その後、独立行政法人を対象にした第2弾、特別会計を対象にした第3弾前半と民主党政権の目玉として実施されてきた。
今回の「再仕分け」は、これまでの仕分けや各省の「行政事業レビュー」(省内仕分け)で、「廃止」「見直し」などの 判定を受けたにもかかわらず、各省が11年度予算の概算要求で“復活”させている事業が対象。その数は11府省の112
事業。
「再仕分け」を報ずるテレビのコメン テーターは「ゾンビのようだ」「官僚がしたたかだ」などと論評しているが、 ちょっと待てよと思う。
昨年の事業仕分けは、自公政権が編成した予算に対する切り込みだった。それまで与党の一員だった私も、キメ細かな チェックを怠ったことを反省した。ところが、今回の仕分け対象となった事業の概算要求は、今年8月末に菅内閣で行われたものだ。
民主党は「自公政権は“官僚主導”」と 批判していた。本年度の予算は予算編成 までの時間も少なく、全面的な組み替え は無理だったかもしれない。しかし、来年度予算案の概算要求は、「政治主導」の名のもと、大臣、副大臣、政務官の政務三役が、最終決定をしたものではないのか。
「再仕分け」の事業の中には厚労省の 「医師確保、緊急・周産期対策補助金」「女性と仕事総合支援事業」なども含まれている。これらの事業の概算要求をした
長妻昭前厚労相が、今回「仕分け人」として「再仕分け」に加わっている。冒頭の「何をやってるんだろう」という気分 になってしまう。
仕分け人の間では、仕分け判定に法的権 限や強制力がないことが、“ゾンビ”の ような概算要求の復活になるとの声がある。しかし、各省では同じ民主党議員が
政務三役という“絶対権力者”なのだから、「政治主導」で決断するだけで済む はずだ。
そういえば、「尖閣ビデオ流出事件」でも、官僚である海上保安庁長官の更迭を示唆しながら、政治家である国交相の進退には「政治職と執行職のトップは責任のあり方が違う」などと、“逃げ”の見解を述べた官房長官もいる。「政治主
導」 と言いながら、政治責任を回避しようと するのが今の内閣の姿だ。仕分け劇場も 結局はパフォーマンスにすぎないと国民 は感じ始めている。
(平成22年11月17日付 「夕刊フジ」より転載)