野田首相 自らの言葉に責任もて
民主党のブーメランがまた明らかになった。
今度は野田首相だ。2009年の衆院選。大阪の選挙区の応援に入った野田首相の街頭演説の模様がユーチューブで流され話題になっている。
「マニフェスト、イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです。それがルールなんです」
「消費税5%分のみなさんの税金に、天下り法人がぶら下がっている。シロアリがたかっているんです。(中略)シロアリを退治して、天下り法人なくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです」
少し引用が長くなってしまったが、読者も開いた口が塞がらないだろう。野田内閣は通常国会で、消費税増税の法案を出そうとしている。そのために今年初め、「社会保障と税の一体改革」と称して、政府・民主党としてその素案をまとめた。
だが、政権交代から2年半。有権者の前で訴えた言葉はどうなってしまったのか。当時の自公政権に対する批判とはいえ、野田首相の言葉がブーメランのように戻ってきている。
民主党はこれまでも党幹部のブーメラン発言が話題となってきた。
有名なのは04年。小泉内閣の3閣僚の年金未納問題に対して、「未納3兄弟って言うんですよ」と発言した菅前首相。その後、自分も未納疑惑が発覚し、党代表を辞任した。
鳩山元首相も03年、「秘書が犯した罪は政治家が罪を受けるべきなのです」と、メールマガジンで書いている。ところが、政治資金規正法違反で自らの秘書が有罪判決を受けても、秘書のやったこととして「罰」を受けることはなかった。
今回の野田発言は、国民生活に直結する消費税問題に絡むことなので、さらに深刻だ。
マニフェストについてもそうである。民主党のマニフェストに書いてあったことはどれだけ達成されたのか。消費税増税はマニフェストに書いてなかったはずだ。
今回の消費税増税は野田首相の言った「ルール」を自ら破っていることにならないのか。
国民は政治家の言葉を信用しなくなっている。これは民主主義にとっては大変な危機だ。
今日から始まった通常国会。首相は自らの言葉にどう責任をもつのか。あいまいなのは言い訳で終始すれば、国民は野田内閣を見放すだろう。
(平成24年1月25日付 「夕刊フジ」より転載)