連載53 経済の効率化一辺倒を懸念
経済の効率化一辺倒を懸念
働くのは「生身の人間」だ
2008年は波乱含みの幕開けとなっている。
サブプライムローン問題で米国経済が揺れる中、日本へも影響が出始めている。日経平均株価も下落が続き、先週末で1万3000円台まで落ち込んでしまった。
昨年からの原油高騰も収まる気配はなく、年明け早々、一時、1バレル100ドルを越えてしまった。その影響でガソリンも値上がりしたままで、先週金曜にスタートした通常国会は、「ガソリン国会」とも言われている。
「日本は大丈夫だろうか」。読者の皆さんの中にも、そう思っている人も多いのではないか。小泉内閣でスタートした「構造改革」。それとともに成長路線を推し進めてきた政府・与党だったが…。
金曜の衆議院本会議場。福田首相の施政方針演説とともに行われた大田弘子・経済財政相の経済演説。日本経済の新たな成長への道筋について、①世界にとつながるオープンな経済システム②サービス産業を活性化し、生産性高める③人材の力を高める―の3点を挙げた。私は衆議院の本会議場で、その演説を聞きながら思った。「マクロの方向性はその通りだが、個別の問題は丁寧にやらないと…」
例えば生産性を高めるのはよいが、雇用の安定も大切な視点ではないかと思う。
派遣労働の法制が変わり、非正規の社員が増えている。その結果、正規社員と非正規社員の格差がクローズアップされた。企業側からいえば効率化が進み、生産性は高まっているかもしれない。しかし、そこで働く人々は「生身の人間」だ。
福田首相は施政方針演説で「行政は国民の立場に立って、国民が何を求めているのかということを、念頭に置かなければなりません」と語った。
企業が強くならなければ、経済も向上しない。一方、そこに働く人たちは、まさに国民だ。
昨年の参院選の与党の敗北は、1人1人の“痛み”に鈍感だったことも大きな要因だと思う。
福田首相は「労働分配率の向上に向けて、正規・非正規雇用の格差の是正や、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなどを行います」と、これまでの改革の?ひずみ?の是正に言及。福田内閣を支える与党の1人として、首相の言葉を聞いて、ホッとした。
今後、現場へのキメ細かな対応が、そして「国民の立場に立った」政治が問われる1年になるだろう。
(平成20年1月22日付 夕刊フジより転載)