「社会保障」の間違った“常識”
「社会保障は『世の中の常識』と『実際』の間の乖離度合いが大きい。『天動説』と『地動説』くらいのレベル」
「いわゆる専門家といわれている人たちも含め、皆間違っていたというような、常識的にはあり得ないようなことが、社会保障においては起こってしまっている」
2012年度予算案も今週中に衆院を通過する。1ヵ月に及ぶ予算委の審議だったが、やはり「社会保障と税の一体改革」がクローズアップされた。先月27日には有識者を招いて、参考人質疑が行われた。
少子高齢社会が急激に進むわが国にあって、特に年金問題は国民の関心も高い。
だがマスコミをはじめ多くの国民が持っている常識は間違っていると主張した参考人がいた。
自公、民主それぞれの政府の社会保障に関する会議の委員を務めた経済評論家の細野真宏氏。冒頭の言葉は細野氏が予算委で配布した資料に書かれていた。
04年の年金改革以来、民主党は年金の不安をあおって、それを原動力に政権交代を果たしたといっても過言ではない。細野氏は予算委で次のように述べた。
「(保険料の)未納が増えると年金が破綻するという話。(略)これほどの見事なひっかけ問題はない」
08年の自公政権下の社会保障国民会議。11年の民主政権下の社会保障検討会議といずれも未納が増えても年金財源は破綻しないことが明らかにされている。
それは未納だと年金の受給がその分減るため年金財政そのものには影響はないということだ。しかし、未納の問題は受給が減るため放置していてはいけないと細野氏は主張する。
もう一つの「ひっかけ問題」は「少子高齢化で年金が破たんする」ということ。人口の推移をみると、90年代は現役世代5.1人で高齢者1人を支えていたが、2030年は1.7人で1人を支える。このままいくと年金は破綻するとマスコミでも言われていた。(民主党も同様に主張していた)
だが、このデータは今の年金制度の前提となっている数字で、今後、出生率が1.26になると想定している。細野氏は今年1月に出された人口推計では出生率を1.35に上方修正され、プラスの方向に進んでいると指摘。
さらに、「そういう話が出ても、いや、これはより深刻なことを意味しているという解説が、いまだにテレビとかに多いのは、あまりにも勉強不足」とバッサリと切り捨てた。
細野氏の陳述に、年金不安をあおってきた民主党議員は、静かに耳を傾けていた。
「月額7万円の最低保障年金」。絵に描いた餅のような民主党マニフェストに書かれた年金案だが、もうそろそろ取り下げた方がいいかもしれない。
(平成24年3月7日付 「夕刊フジ」より転載)