連載143 増税の前に公費削減が筋


 
 
増税の前に公費削減が筋
 
 
 
 
 
 
 年末にかけて野田首相が消費税増税に前のめりになっている。
 
 野田政権は「社会保障と税の一体改革」と称して、来年3月末までに消費税増税の法案を出そうとしている。
 
 そのために、政府・民主党内では、年金・介護・医療などの社会保障の改革案とともに、消費税をいつから、どれくらい上げるのかという素案をまとめようと、七転八倒している。
 
 急速に進む少子高齢社会。年金・介護・医療などの社会保障は、セーフティーネットとして持続可能な制度にしなければならない。
 
 一方で、日本の財政は赤字が積み重なり、来年度の予算案の編成でも、三年連続で収入より借金の方が多くなりそうだ。
 
 各マスコミの世論調査でも、消費税増税について半数近くがイエスの回答となっている。
 
 多くの国民は少子高齢社会の中で、社会保障の拡充のためなら、消費税のアップもやむをえないと思っている。
 
 だが、政府与党の「社会保障と税の一体改革」の議論の報道が増すにつれ、増税について、国民の目は厳しくなっているような気がする。
 
 それは、国民に負担を求める前に、政治家や公務員が、自ら身を切ることを、やるかどうかを見ているからだ。
 
 国会議員の定数削減や公務員の人件費削減が進んでいない中、国民に負担増を受け入れてもらうのは無理筋だ。
 
 また、これまでの政府・民主党の社会保障改革の議論も、国民を納得させるものではない。
 
 民主党は09年衆院選のマニフェストで、年金について、国民・厚生・共済の各年金一元化と、すべての国民に最低保障年金として月額7万円を支給し、その財源を消費税とするとした。
 
 ところが、政権交代して既に2年。年金はいくら払って、いくら支給されるかということが根本。民主党はその骨格さえ示していない。
 
 苦し紛れに、年金抜本改革(民主党のいう一元化)の法案は再来年の通常国会に提出するといいはじめる始末。
 
 ちょっと待ってもらいたい。
 
 そうすると再来年になってはじめて、年金の財源がいくら必要になるかが分かるわけだ。
 
 では来年春の消費税法案の増税分の根拠はどうなるのか。
 
 また会社員の厚生年金と公務員の共済年金も、不公平感がある中、2つの年金の一元化も先送りにしてしまった。
 
 実は2009年に当時の自公政権が、厚生・共済の一元化法案を出した。
 
 ところが民主党は「全ての年金の一元化」を主張し廃案に。
 
 今回の先送りも含めて、民主党政権は公務員の優遇を続けさせてしまっている。
 
 消費税増税については、足元の民主党内からも反対署名を集める動きがある。
 
 国民や野党を納得させる前に、まず身内を理解させるのが先ではないか。
 
 だが、根拠のはっきりしない増税では、国民の理解を得ることはできない。
 
 
 
 
 
 


 
 
(平成23年12月21日付 「夕刊フジ」より転載)


 

2017年02月20日