増税の前に公費削減が筋
年末にかけて野田首相が消費税増税に前のめりになっている。
野田政権は「社会保障と税の一体改革」と称して、来年3月末までに消費税増税の法案を出そうとしている。
そのために、政府・民主党内では、年金・介護・医療などの社会保障の改革案とともに、消費税をいつから、どれくらい上げるのかという素案をまとめようと、七転八倒している。
急速に進む少子高齢社会。年金・介護・医療などの社会保障は、セーフティーネットとして持続可能な制度にしなければならない。
一方で、日本の財政は赤字が積み重なり、来年度の予算案の編成でも、三年連続で収入より借金の方が多くなりそうだ。
各マスコミの世論調査でも、消費税増税について半数近くがイエスの回答となっている。
多くの国民は少子高齢社会の中で、社会保障の拡充のためなら、消費税のアップもやむをえないと思っている。
だが、政府与党の「社会保障と税の一体改革」の議論の報道が増すにつれ、増税について、国民の目は厳しくなっているような気がする。
それは、国民に負担を求める前に、政治家や公務員が、自ら身を切ることを、やるかどうかを見ているからだ。
国会議員の定数削減や公務員の人件費削減が進んでいない中、国民に負担増を受け入れてもらうのは無理筋だ。
また、これまでの政府・民主党の社会保障改革の議論も、国民を納得させるものではない。
民主党は09年衆院選のマニフェストで、年金について、国民・厚生・共済の各年金一元化と、すべての国民に最低保障年金として月額7万円を支給し、その財源を消費税とするとした。
ところが、政権交代して既に2年。年金はいくら払って、いくら支給されるかということが根本。民主党はその骨格さえ示していない。
苦し紛れに、年金抜本改革(民主党のいう一元化)の法案は再来年の通常国会に提出するといいはじめる始末。
ちょっと待ってもらいたい。
そうすると再来年になってはじめて、年金の財源がいくら必要になるかが分かるわけだ。
では来年春の消費税法案の増税分の根拠はどうなるのか。
また会社員の厚生年金と公務員の共済年金も、不公平感がある中、2つの年金の一元化も先送りにしてしまった。
実は2009年に当時の自公政権が、厚生・共済の一元化法案を出した。
ところが民主党は「全ての年金の一元化」を主張し廃案に。
今回の先送りも含めて、民主党政権は公務員の優遇を続けさせてしまっている。
消費税増税については、足元の民主党内からも反対署名を集める動きがある。
国民や野党を納得させる前に、まず身内を理解させるのが先ではないか。
だが、根拠のはっきりしない増税では、国民の理解を得ることはできない。
(平成23年12月21日付 「夕刊フジ」より転載)