“異物”と過剰反応するのでなく
譲り合いなければ政治も「花粉症」に
街を歩く人にマスク姿が目立ちはじめた。春風の訪れとともに花粉症の季節がやってきた。かくいう私も花粉症に悩まされ、外に出る時はマスク姿になる。
私の場合は3年前の春。急に“鼻水”に襲われた。それまで、花粉症で苦しんでいる人が横にいると、「大変ですね」程度に思っていた。ところがある日、帰宅してホッと一息、くつろいでいると、鼻水がタラーっと流れ出した。
「風邪かな?」と一瞬思ったが、サラサラした鼻水で、かんでもかんでも出てくる。ティッシュ箱がすぐ空になった。
「もしかして花粉?」。それから付き合いが始まった。
私の住む東京・多摩地区はスギ花粉の飛散が多い。東京西部に多くのスギが植林されているからだ。
最近の新聞・TVの天気予報は花粉情報を出している。わが家では飛散量の多い日など車のフロントガラスが、黄色くなっていることもある。地球温暖化の事を考えると、緑の保全は大切だが、春の“鼻水”に襲われるたびに、「全部切ってしまえ!」と思ってしまうのは私だけだろうか。
そもそも花粉症は身体の免疫反応といわれる。体内に侵入してきたウィルスや細菌などの異物を排除する反応だ。本来なら、有害なものを排除するという、身体にとってきわめて大切な反応なのだが、過剰になりすぎて花粉症となってしまう。
政治の世界でも過剰に反応しすぎて、うまくいかない場合が多々ある。先週1週間、国会が空転した。先月末に予算案と歳入法案の衆議院での採決をめぐって、与野党がぶつかりあった。野党は「強行採決だ」と言い、与党は「審議は十分尽くした」と反論する。
また、日銀総裁人事をめぐっても与野党の駆け引きが行われている。
各党ともそれぞれの主張があるのは当然だ。しかし昨年夏の参院選後は「ねじれ国会」となり、与野党が合意しなければ、物事が進まなくなっている。
これから始まる参議院での予算審議。最大のテーマは道路特定財源。ここは相手の主張を“異物”と過剰反応するのではなく、受け入れていく、譲り合うことが与野党ともに必要ではないか。
そうでなければ国全体が“花粉症”になってしまう。困るのは国民の一人一人なのだから。
(平成20年3月11日付 夕刊フジより転載)