全省庁のタクシー券全廃を
「財務省の前では最近、客待ちしているタクシーが減りましたよ」
霞ヶ関の官僚が公費でタクシーを利用して深夜帰宅する際、運転手から金品を受け取っていたと問題になった直後だった。都内でタクシーに乗ると、中年の運転手が笑いながら言った。
“居酒屋タクシー”とまで揶揄(やゆ)された。「ふざけんじゃないよ。こちらは本物の居酒屋で飲んだ後、電車の吊り革につかまって帰ってるんだ!」。梅雨時の蒸す電車中。帰宅途中にこのコラムを読んでいる、サラリーマンの皆さんの怒りの声が聞こえてくる。
中には5年間で750回の利益提供を受けていた財務省職員もいたという。年間150回タクシーで帰宅していることになる。ちょっと待ってもらいたい。国家公務員も通勤手当が出ているはずだ。これでは通勤手当の“二重どり”と言われても仕方あるまい。
9日に首相官邸で開かれた政府与党会議。「あまりにもひどい。国民意識と懸け離れている」とわが党の太田代表がタクシー券利用の廃止も検討すべきだとの考えを示した。
今、タクシー券を自由に使える民間会社はどれほどあるだろう。
残業が終電の時間を過ぎて、やむを得ずタクシーを利用する場合もある。その場合、いったん自腹で立て替え払いをして、事後精算すればよいはずだ。タクシー券だと、「遅くまで残っても、タクシーで帰れる」と安易な選択はなかったか。
そんな議論がなされていた矢先だった。13日の閣議後記者会見。冬柴国交相が、本省の全職員約4000人を対象に2カ月間、タクシー券の使用禁止を発表した。
これまで道路特定財源の問題で“官僚寄り”とマスコミや野党に批判された冬柴国交相だが、ここはクリーンヒットを放ってくれた。
冬柴国交相が率先
同省の本省職員のチケットの利用は1日約200件。年間で12億4000万円にも上る。「問題は仕事のやり方にある。深夜1時、2時まで仕事をするのは異常」と冬柴国交相。
国会の委員会の前日。野党議員の質問通告が遅くなり、資料づくりや答弁原稿の作成などで深夜まで官庁の電気がついている。タクシー券の廃止とともに、仕事のあり方も考え直す時かもしれない。
福田首相は国交省だけでなく、全省庁のタクシー券全廃を指示する時にきている。
(平成20年6月18日付 夕刊フジより転載)