議事録問題は『隠蔽』ではなく『能力不足』
「結果的に議事概要が残っていない部分があったことは、大変申し訳なく思っております」
枝野経済産業相が陳謝した。今月2日の衆院予算委員会での私の質問を受けての答弁。
東日本大震災の対応で、後手後手にまわっていた民主党政権だが、また、いいかげんな対応が明らかになった。
今回の震災直後から政府が設置した15会議のうち、10会議で議事録を作成していなかった。
そのうち原子力災害対策本部と緊急災害対策本部、被災者生活支援チームの3つの会議では、議事録だけでなく、議論の要点をまとめた議事概要も作っていなかった。
福島県双葉町の井戸川町長は「議事録がないとうことは、国民に対する背信行為だ。隠蔽とねつ造には厳正な態度で究明してほしい」と厳しく批判。
国会の原発事故調査委員会の黒川委員長も「全く信じられない。理解不能だ」とあきれ顔。
さらに「復元した記録ではなく、あるものをすべて出してほしい」と、出席者のメモなど加工しないで提出することを政府に求めた。
これから検証しようとするのに、その素材がなければ検証しようがない。
震災の発生直後は政府中枢も混乱していたと思う。
しかし、問題なのはその後だ。震災から3週間後の4月1日に公文書管理法が施行された。
その日の閣議で公文書管理の担当である蓮舫国務相(当時)が同法が施行されたことを紹介し、「東北地方太平洋沖地震への対応をいただいている中での施行となるが、政府一体となって適切な文書管理の徹底を図るため、各官僚におかれても、今後とも所属の職員のご指導をお願いしたい」と言及した。
当時、官房長官だった枝野経産相に、この時の閣議の認識を予算委で質問した。すると枝野経産相は「よく覚えている」と答弁し、冒頭の陳謝につながった。
民主党は野党時代から情報公開について熱心だった。しかも公文書管理法は民主党が主導して修正案まで出して成立した。
ところが、政権交代すると、マニフェストも含め、これまで主張していたことを平気で覆すようになった。
野党の中には議事録問題を民主党の隠蔽体質という人もいるが、私はそう思わない。震災後の混乱が収まっても議事録にまで考えが及ばない。
余力がないわけだ。つまり政権担当能力がないということにつながる。
マニフェストが総崩れする中、消費税増税を主張する前に、自らの能力を総点検することが、今の民主党には必要だ。
(平成24年2月8日付 「夕刊フジ」より転載)