タバコ、やめるか続けるか
やめるか、それとも、続けるか――。政策の話ではない。
喫煙の話だ。
10月1日からタバコが値上げされる。値上げのたびに多くの愛煙家が「決断」を迫られる。私もその一人なのだが…。
昨年暮れに政府・民主党で議論された平成22年度の税制改正。ガソリン税の暫定税率を廃止するとマニフェストで掲げ、政権交代をした民主党だが、小沢一郎幹事長(当時)の"ツルの一声"で、1年目はあっさりとそのマニフェストを放棄した。
さらにムダを省いて財源をつくると言いながら、それもままならず、タバコ税を上げると決定した。しかも1本あたり3.5円の税率引き上げとなった。
日本たばこ産業(JT)は「大幅な需要減少が見込まれる中、メーカーとしてのコスト削減だけではカバーしきれない」として、主要銘柄で1本5.5円~7円の値上げに踏み切る。
例えば、1箱300円のマイルドセブンは410円に。過去10年で3度も増税されたタバコだが、海外と比べてもまだ安いのは確かだ。昨年6月段階で、ノルウェー1450円、イギリス1150円、アメリカ840円、フランス830円、ドイツ740円――となっている。
タバコは「健康に良くない」「有害だ」と指摘されながらも、愛煙家からは「それなら売らなければいい」、「自分の体を犠牲にして財政に貢献しているんだ」との声がある。
タバコの価格は大半が税金。1箱300円の場合、本体価格は37%の110.84円。たばこ税が58%の177.88円。さらに消費税5%に相当の14.28円。1日1箱吸う人なら年間約7万円弱を納税していることになるわけだ。
平成10年12月、旧国鉄の債務処理のために「たばこ特別税」が創設された。その増税の恩恵にあずかったJR東日本が首都圏の駅の全面禁煙にしたのは驚いた。「タバコで借金を返してもらったのに、そんな仕打ちは…」と思った愛煙家も多いのではないか。
しかし、世の中は確実に禁煙、嫌煙、さらに絶煙の流れになっている。
多くの愛煙家がタバコをやめることで、税収は減る。一方、健康増進につながり、医療費の伸びにブレーキがかかれば、財政に貢献できる。
結局は、財政の問題というより、個人の意思の問題だ。禁煙した方が自分の健康にとってプラスは間違いないのだから…。
(平成22年9月22日付 「夕刊フジ」より転載)