連載141 今こそ政治は「民のかまど」


 
 
今こそ政治は「民のかまど」
 
 
 
 
 
 
 
 明日、23日は勤労感謝の日。
 
 「国民の祝日に関する法律」によれば「勤労をたっとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう」日と規定している。
 
 1948年に施行された同法だが、戦前も新嘗祭として祝日だった。新嘗祭は、天皇がその年に収穫された新穀や新酒を天照大神をはじめとする神々に供えて感謝し、自らも食する儀式だった。
 
 歴史は古く、日本書紀には皇極天皇元年(642年)に新嘗祭の記述がある。日本は「瑞穂の国」といわれるように、天皇家にとって農業に関わる重要な行事だったが、戦後のGHQ政策で、天皇家と切り離す形で「勤労感謝の日」となった。
 
 だが、今でも宮中祭祀として天皇陛下が皇居・神嘉殿において新嘗祭をとり行なっている。今年は体調を崩され、新嘗祭への出席はされないという。
 
 さて、「勤労感謝」だが、今、経済は不安定な状態。経営者やサラリーマン諸氏にとっては「感謝したいが、その前に景気を何とかしてもらいたい」というのが本音ではないか。
 
 ギリシャから始まった欧州の経済危機をきっかけに、円高が進み、日本経済も青色吐息。先日も衆院予算委員会で取り上げたが、輸出関連の中小企業は利益どころではない。「今の政権は中小企業を助けてくれない」とは東京・大田区の中小企業社長の言葉だ。
 
 第16代の仁徳天皇は「民のかまど」で有名だ。難波高津宮から遠くを見た天皇が、「民のかまどより煙がたちのぼらないのは貧しくて炊くものがないのでは」と、3年間の税を免除した。3年後、高殿に立つと多くの煙が見え、天皇は「私も豊かになった」。宮殿は荒れたままと指摘する皇后に、「民が富んでいることが私が富んでいることだ」と答えたという。
 
 3・11以降、計画停電のエリアでもないのに、天皇陛下は御所の電気を「自主停電」された。「民のかまど」の精神は歴代天皇に受け継がれている。
 
 一方、政治家は、今の国の危機に際して何をしているか。野田首相は「民のかまど」が好きなようだ。2008年1月に自らのブログ「かわら版」に「民のかまど」を引用。財務副大臣時代の昨年2月、財務省の広報誌の巻頭言では「民のかまどを最優先課題とする日本古来の政治を実現するため力を結集していかなければならない」と述べた。
 
 しかし、今の政権は仁徳天皇の減税とは逆の消費税増税に前のめりだ。「勤労感謝の日」を前に国民が働けることに感謝できる政治が今こそ求められている。
 
 
 
 
 


 
 
(平成23年11月23日付 「夕刊フジ」より転載)


 

2017年02月20日