連載54 政局第一ではなく生活第一


 
政局第一ではなく生活第一
 
 
 
 
 
 
国民にとってのプラスを謙虚に話し合おう
 
 「これは幹事長の署名だが、党首が『そんなの知らない』ということがないように」
 
 先月30日の午後3時過ぎ。国会の常任委員長室に河野衆院議長、江田参院議長とともに与野党幹事長が集まった。
 
 ガソリン税の暫定税率などの期限を2ヵ月間延長する「期限延長法案」(つなぎ法案)をめぐり、国会が混乱していた。議長斡旋(あっせん)を与野党が了承、6党の幹事長が署名をし、河野議長が冒頭の言葉を発した。議長は当初、党首会談での合意署名を求めたが、民主党が拒んだ。
 
 「それは私に言っているのですか」と民主党の鳩山幹事長が答えると、笑いが広がったという。
 
 通常国会の最大テーマは予算案と租税特別措置法などの税制改正法案が3月末の年度内に成立するかどうかだ。29日夜に「つなぎ法案」を与党が提出し国会が緊迫した。
 
 民主党は暫定税率を撤廃しようと、税制改正法案の年度内成立を阻止し、「政局」に持ち込んで解散に追い込む戦術だった。同法案にはガソリン税だけでなく、さまざまな減税の暫定税率維持も含まれている。年度内に成立しなかった場合は国民生活の混乱も予想された。例えばステーキ用の輸入牛肉が100グラムあたり約15円の上昇。輸入麦芽の関税も上がりビールも値上がりする。「つなぎ法案」は年度内に税制改正法案が成立しなくても、国民生活の混乱を回避し、審議を尽くそうというものだった。
 
 あるテレビ番組は、この「つなぎ法案」で暫定税率の10年延長が決まるかのような誤った報道をしていた。記者もキャスターも、もう少し勉強をしてもらいたいと思う。
 
 民主党は徹底抗戦の構えだったが、両院議長が斡旋に乗り出し、何とか収束した。
 
 各党幹事長が署名した斡旋文章には「税法については各党間で合意が得られたものについては、立法府において修正する」とある。
 
 これは前日、与党から提案した内容だ。与野党とも、自らの考えがすべて正しいと考えるのではなく、国民にとって何がプラスになるかを謙虚に話し合うことが大切との思いが、この一文に込められている。
 
 ひとまず国民生活の混乱は回避された。わが党の太田代表が与野党合意のあと「政局第一ではなく生活第一」と言っていた。そういえば民主党も「国民の生活が第一」というスローガンを掲げていたはずだったが…。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成20年2月5日付 夕刊フジより転載)
 
 

2017年02月20日