資質が表れた鳩山、菅両氏の「言葉」
この欄で政治家の「言葉」の大切さを何度か書いてきた。民主党による政権交代後、俎上に乗せたのは政権トップを務めた鳩山、菅両氏だ。
これまで何度もあきれるような発言を繰り返してきた2人だが、今回の内閣不信任案をめぐる発言は、2人の資質を端的に表したものだった。
鳩山氏は1日、不信任案に賛成の意向を表明。採決の日の2日朝も記者団に「こんな党にしたつもりはなかった」。ところが、本会議前の民主党代議士会では「ぜひ一致して行動できるようお願いしたい」と、一転、不信任案の反対を訴えた。第2次補正予算の編成にメドがついたら菅首相が辞任をするという約束をしたからという。
母親からの献金問題、普天間基地移設問題など、前言を翻すのはお手のものの鳩山氏。これくらいはよくあること。だが、岡田幹事長の2次補正は首相退陣の条件ではないとの発言を聞くと、真顔で「ウソだ。人間はウソをついてはいけない」と語る。テレビでこの場面を見ていた私はイスからずり落ちそうになった。さらに翌日は「口で約束したことを守るのはあたり前、それができなければペテン師」とも。「最低でも県外」の言葉は忘れたようだ。この人の辞書には「恥」という文字はないらしい。
一方、不信任案が可決しそうなところまで追い込まれた菅氏。驚異の粘り腰を発揮した。
民主党代議士会で菅氏は、
①震災の復旧復興に全身全霊を挙げて、最大限努力する
②民主党を壊さない
③政権を自民党に戻さない―の3点を述べた。
復旧復興に全力を尽くすのはあたり前のことだ。
政治は結果が全て。震災後の3カ月になろうとしている現在、いまだに10万人もの被災者が避難所生活を強いられている。この人の言葉は「全身全霊」、「最大限努力」など抽象的な表現が多く、具体的にどうするかが欠けている。さらに、②③点目は国民の側、特に被災者の側からいえば関係ないことだ。
そして、退陣表明となった「一定のメドがついた段階での若い世代への引き継ぎも果たして」との発言が飛び出した。しかし、この「一定のメド」の解釈で混迷を深める。翌日の朝日新聞朝刊は「辞任は年明け示唆」と一面で見出しを打った。不信任案の賛成を表明していたある民主党代議士は本会議後、「総理を信じてあげないと」と私に話したが、見事首相にダマされてしまった。
なぜ、野党は内閣不信任案を出したのか。中国の古典「荀子」に「拒諌飾非(きょかんしょくひ)」という言葉がある。「忠告されることを拒み、自分の非を弁護し、愚かな上に自分に付和雷同する者だけを重用していては、国は必ず禍いあうだろう」と説いている。
国が滅びる前に早く辞めてもらわなくてはならない。
(平成23年6月7日付 「夕刊フジ」より転載)