連載112 何をしたいのか語らぬリーダー


 
何をしたいのか語らぬリーダー
 
 
 
 
 
自衛隊発言、開いた口が・・・
 
 開いた口が塞がらないー。菅首相が19日、自衛隊4幕僚長との会合でのあいさつのことだ。首相はこう述べた。  
 
 「改めて法律を調べたら、自衛隊に対する最高の指揮監督権を有していた」
 
 実際、自衛隊法第7条に「内閣総理大臣は内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」と明記されている。  
 
 さらに首相は「昨日予習をしたら、(防衛)大臣は自衛官ではないそうだ」とも述べた。  
 
 こちらも憲法66条に「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と規定している。  
 
 条文を暗記する必要はないが、首相が自衛隊の最高指揮監督権を有するなどということは、国会議員でなくても常識だろう。中高生も授業で「文民統制」について習うはずだ。  
 
 折木総合幕僚長は会合終了後、「冗談の話と思う。指揮官と自覚した上での発言と認識している」と大人の対応をしてみせたが、「冗談じゃない」というのが本音ではないか。首相発言の新聞記事を読んだ大学2年の長男も、「ホントに知らなかったのかなあ」と驚きの声をあげていた。  
 
 鳩山前首相が米海兵隊の抑止力について、「学べば学ぶにつけ(海兵隊が)連携し、抑止力を維持できるという思いに至った」と語ったが、菅首相にも同じ“ニオイ”を感じるのは、私だけではあるまい。  
 
 そもそも安保・防衛について菅首相はどう考えているのか。いや、それ以外にわが国の経済・財政や社会保障をどう考えているのか。参院選前に突如言い出した「消費税増税」は、どうするのか。国民には全く伝わってこない。
 
 むしろ、そんなことそっちのけで民主党は今、来月14日の代表選に夢中。「反菅」VS「反小沢」による駆け引きが過熱しているようだ。  
 
 何をしたいか明確に語らない菅首相。一方、対抗馬とみられる小沢前幹事長の動きも、3カ月前に鳩山前首相と一緒に辞任した理由を忘れているかのようだ。「政治とカネ」が理由で辞めた小沢氏。説明もしないまま、今度は代表選に担ごうとす声が高まっているのは、理解できない。  
 
 参院選で国民から“レッドカード”を突きつけられた民主党政権だが、国民感覚からかけ離れたところで、代表選が展開されている。  
 
 円高と株安で景気の先行きが不透明になる中、経済対策の議論も遅れ気味。民主党は何のために政権についたのか。このままでは犠牲になるのは国民だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成22年8月24日付 夕刊フ ジより転載)
 
 

2017年02月20日