連載150 増税より防災こそ待ったなし


 
 
増税より防災こそ待ったなし
 
 
 
 
 
 
 
 
 「認識を共有させていただきました」
 
  握手を求めてきた野田首相が、私に向って話した。
 
  衆議院の第一委員室。先月30日、予算委員会で暫定予算案の採決直後のことだった。その日、予算委で私は首都直下地震について質問した。

  政府の中央防災会議によると、首都直下地震の発生確率は30年以内に70%。これは30年後に発生するのではなく、今起きてもおかしくない数字だ。しかも、先月、文科省の研究チームの調査で、震源の深さが従来の想定より10㌔浅いことが分かった。この調査で震度6強だった最大震度が震度7の所もあるという。
 
  質問の冒頭、政治の究極の目的は国民の命をいざという時に守ることではないかと尋ねた。野田首相も「一番大事なのは、高木委員御指摘のとおり、国民の命を守ること」と答弁した。

  さらに、「きょうは追及ではなく、共有の認識を持っていただき、どうするかという、スタートにしたい」と述べ、質問に入っていった。
 
  まず耐震化の問題。首都圏1都3県で、1981年の建築基準法改正以前の住宅は370万戸ある。そのうち耐震改修された建物は2006年からの5年間でわずか1万7千戸。阪神大震災の時は震度7の揺れで住宅の多くが潰れてしまった。
 
  首都直下地震の18パターンの震源域のうち、東京湾北部地震(最大震度6強)が最も被害が大きい。全壊発生時間が夜の場合、数十万人が全壊家屋に生き埋めになることも考えられる。ところが、救助にあたる消防、警察、自衛隊が48時間以内で出動できる人数は約7万人(ただし、救助部隊も被災している可能性がある)。これはもう、自ら脱出するか、地域の人に救出してもらうほかない。
 
  今、電車に乗って、このコラムを読んでる皆さんも大変。朝7時台のラッシュ時に首都圏のJR、私鉄、地下鉄に乗っている人は約300万人。阪神大震災は明け方の発生で、あまり電車は動いていなかったが、震度7のエリアの電車は14本中13本が脱線。震度6強のエリアは13本中3本が脱線した。もし、時速100㌔の電車がカーブの所で脱線したら、JR福知山線の事故のようになってしまう。
 
  大丈夫なのかと思うことはまだまだある。東日本大震災の時は「想定外」という言葉がよく使われていた。首都直下地震に対する問題意識を「共有」した野田首相に、消費税にのめり込むだけでなく、「防災も待ったなし」と申し上げたい。
 
 
 
 
 


 
 
(平成24年4月11日付 「夕刊フジ」より転載)

 
 

2017年02月20日