民主党に聞きたい具体論
テロ、海賊対策…政権交代すればどうするのか?
久しぶりに党首討論が行われた。
周りの与野党議員のヤジについて、テレビでコメンテーターが「子供に見せられない」と批判していた。ヤジもひどかったが、麻生首相、民主党の鳩山代表ともに相手の非を突く展開だったが、率直に言えば「内容がなかった」。
麻生首相は冒頭、「どちらが内閣総理大臣にふさわしいか。どちらの政党が政権を担う力があるか」と語りかけた。まさに、近く行われる衆院選挙を前に、国民は注目していたはずだ。だが、互いに抽象論が多く、具体性に欠けていた。
鳩山代表は国のあり方として「友愛社会の建設」と言った。「人の幸せを自分の幸せと思える世の中にしたいと思っている」と述べたが、どのような政策をやれば、そのような世の中になるのか。有権者はそこを聞きたかったのではないか。
民主党が政権を取ったら、これまでの野党としての行動と、どのように整合性をもつのだろうか。興味深いところだ。
例えばテロ対策のための自衛隊のインド洋派遣。国際的連携の中で築きあげた国際貢献を、民主党政権は放棄するのか。また、海賊対策のためアフリカ・ソマリア沖に展開中の海上自衛隊。民主党は派遣に反対した。貿易立国の日本にとって生命線でもあるソマリア・アデン湾の安全対策は重要だ。
民主党と連携する社民党もソマリア沖への自衛隊派遣は大反対。ところが、同党の辻元清美衆院議員が設立した「ピースボート」の旅客船が先日、自衛隊に護衛されてアデン湾を航行した。「ピースボート」は市民団体による海自派遣反対の共同声明に名を連ねている。言っていることとやっていることが違う。果して民主党はどう対応するのか。
民主党の小沢前代表は今年2月、在日米軍再編に関して「極東におけるプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分」と発言。折しも、北朝鮮が再び核実験を行った。日本の安全保障について民主党はどう考えるのか。「第7艦隊で十分」と言った人は、代表をやめたものの、代表代行として執行部に残った。今後の党首討論では、これらのことを具体的に国民は聞きたがっている。
ちなみに、ビデオリサーチによると、党首討論のNHK中継の視聴率は5.7%。抽象論が続くと視聴率はさらに下がるに違いない。
(平成21年6月3日付 夕刊フジより転載)