町村発言に強い違和感
選挙だからこそ「簡略化」せず丁寧に
「必ずしも適切な発言とは思わない」
北側幹事長が厳しい表情で語った。先週の水曜日(12日)の定例記者会見でのこと。
年金記録問題で、前日の町村官房長官の発言に対しての質問だった。
社会保険庁の長年にわたる年金記録のズサンな管理。5000万件が該当者不明ということで、今夏の参院選の与党大敗の大きな要因となった。
当時の安倍首相は、街頭演説で、「最後の1人にいたるまで記録をチェックして、年金を支払う」と絶叫した。ところが、その5000万件のうち、1975万件が行き先不明で、さらに945万件が氏名の転記ミスなどで、該当者の特定が困難とみられることが、社会保険庁の調査で明らかになった。
野党は一斉に「公約違反だ」と批判。それに対し、舛添厚労相は記者会見で「他の方が大臣になっても結果は同じ」「『できないかもしれないけどやってみます』なんて言えませんよ」と、開き直りともとれる発言をした。
追いうちをかけるように町村官房長官が、「選挙中だから簡素化してモノを言った」と釈明。これらの発言にマスコミから厳しい批判が相次いだ。
冒頭の北側会見は、とんでもないという思いが込められていたと思う。
町村長官はその後、「私のつたない説明でご迷惑をおかけしている」と派閥の会合で陳謝している。だが一度発信されたものは、なかなか元には戻らない。
これらの発言を聞いて、参院選前夜のような感じがしたのは私だけだろうか。年金記録問題で野党が批判を繰り返し、マスコミが大きく取り上げる。そして閣僚の不適切な発言。
町村長官の「簡素化して」との発言には違和感を覚えた。選挙だからこそ、有権者に分かりやすいように、ていねいに語らなければならないはずだ。
それよりも、今回の年金記録の調査結果で、国民は不安と怒りを増幅させている。まずは閣僚として、おわびの言葉からスタートするべきではなかったか。どうのこうのという説明をする前に、「誠心誠意取り組んできましたが、照合できない記録の存在が分かり、申し訳ありません」という姿勢が、にじみ出ていれば、少しは展開が変わったかもしれない。
政治家にとって必要なものは説明能力以上に、誠意ではないだろうか。
(平成19年12月18日付 夕刊フジより転載)