“一枚岩”ではなかった地元自民
滋賀県知事選、現職が敗北
バイブレーターにしていた携帯電話が鳴った。
今月2日、夕方5時過ぎ。地元の東京・立川市内の会合であいさつをしているときだった。
壇上から降りて、電話の着信履歴を確認すると、そこには「冬柴幹事長」。あわてて留守電を聞くと、「あー高木君、忙しいのにスマンねえ」と、人懐っ
い幹事長の声。だが、内容はシビアなもので、滋賀県知事選の出口調査で自・公・民推薦の現職・国松善次氏が、新人の嘉田由紀子氏にリードされている、というものだった。
5月に党の選挙対策委員長に就任したばかりの私だが、すぐに知り合いのマスコミ関係者に連絡をとった。どのマスコミも現職が厳しいとの情報。結果は21万票対18万票で新人が当選した。
その日の夜、私は「敗因を分析し、今後の選挙に影響が出ないようにしなければならない」と、選対委員長名でコメントを発表した。
有効だったシングル・イシュー戦術
2日後、各紙社説は新幹線新駅建設やダム建設などをめぐって、「もったいない」を旗印にした新人・嘉田陣営の主張が勝因と分析していた。地元の公明党滋賀県本部からも選挙結果を分析したリポートが送られてきた。
もちろん、各紙の分析のように、「もったいない」を合言葉に、シングル・イシューに絞った新人陣営の戦術は県民の心に響いたと思う。
昨年の衆院選でも小泉首相が「郵政民営化」一本に絞って大勝したことにも通じる。
確かにそれも一つの要因だが、現職を推薦した政党側にも問題があった。自民・民主ともに過去2回の衆院比例区の滋賀県の票は20万票を超えている(ちなみに公明は7万票)。自民・民主がフル回転すれば40万票を超す計算になっていた。
ところが、自民県議や市議の中には相手候補を支援した人がいた。この動きを同党県連は最後まで放置したという。つまり“一枚岩”ではなかった。4月の衆院千葉7区の補選でも、地元議員団が"一枚岩?でなかったという声が聞かれた。
今回の県知事選で地元紙の出口調査によると、自民支持者の中で、現職に投票したのは6割弱、新人には3分の1が流れた。
民主党も厳しかった。県連は現職を推薦しようとしたが、直前に小沢代表の「首長選の相乗り不可」の指示で、対応が遅れた。結局、民主は現職に推薦を出したものの、出口調査では、民主支持者の64.8%が新人に投票した。
一方、公明支持者は75%が確実に現職に投票している。
この秋、2つの衆院補選が行われる。来年は春に統一地方選、夏に参院選と政治決戦が控えている。何が争点になるか。いや、自らが何を争点にしたいのかが問われている。
もちろん、マスコミが指摘したように、新幹線新駅のように、有権者の心に響くようなテーマを争点にしたことも大きい。だが、その一方で、特にわが党が連立を組んでいる自民党の“一枚岩”が大切なことは言うまでもない。
(平成18年7月11日付 夕刊フジより転載)