マニフェスト配布場所拡大を
読者の中には多くの営業マン(ウーマン)がいると思う。日夜、自社の商品をどう売り込むか、苦労していることだろう。
私たち政党、政治家にとって、顧客である有権者の皆さんに買ってもらう“商品”は何か。それは“政策”だ。
その“商品”の長所を知ってもらうために選挙の際、各政党はマニフェスト(政権公約)を提示し、比較をしてもらった上で、購入(投票)してもらう。
公選法は制定当時から文書配布を厳しく制限してきた。それは候補者の資金力によって、選挙活動に不公平が生じないようにするためであった。
マニフェストは英国が手本で、数値目標、財源、達成の期限などを掲げる。抽象的な“公約”とは違う。
日本では平成15年の衆院選から導入された。だが、地方選ではマニフェスト配布は解禁されなかった。
先日、首長選の公約となる「ローカルマニフェスト」を4月の統一地方選で配布を可能にするよう、公職選挙法改正について自民・公明で合意した。
一方、国政選挙でも課題は残っている。配布の場所だ。現行法では①候補者及び政党の選挙事務所②政談演説会場③街頭演説会場――などしか配布できない。
衆院の場合、300小選挙区の大半に候補者を立てる自民・民主両党はマニフェストを配布できる場所が多い。しかし、公明党のような比例区中心で戦う政党は配布できる場所が圧倒的に制限される。
自民党からは「配れる場所が増えると、組織政党が有利」との声もあり、消極的という。だが、マニフェストは誰のためにあるのか――と問えば、有権者の判断材料のためにあるはずだ。
他の“商品”を排斥して自分の“商品”だけを買ってくれというのは不公平だ。
自分の“商品”に自信があるなら、相手の“商品”も並べた上で、勝負するのが筋だろう。
配布場所の拡大に反対する人たちは自信のない“商品”を有権者に売ろうとしているのか。
そういえば民主党が主張していた「年金目的消費税の導入」「高速道路を無料化」など“商品”はどこへ行ってしまったのだろう。
言いっ放しのマニフェストを有権者は“買う”ことはない。
(平成19年2月20日付 夕刊フジより転載)