一川防衛相は即辞任が当然
沖縄が怒っている。いや沖縄ばかりではない。多くの国民があきれている。
防衛省の田中・前沖縄防衛局長の発言をめぐって、一川防衛相さらには野田内閣の対応についてだ。
那覇市内で行われた地元記者とのオフレコ懇談の席で飛び出した前局長の驚くべき発言。普天間飛行場の辺野古移設で政府が提出する環境影響評価書をいつ出すのかという話を「犯す前に『やらせろ』といわない」などと言った。
オフレコでの発言を報道するべきかとの問題は残るものの、そこには沖縄に対する現政権の姿勢が表れているのではないか。前局長は更迭されたものの
一川防衛相の責任については、曖昧のままだ。
一川防衛相は就任直後の会見で「安全保障に関して素人」と発言。ブータン国王の晩さん会を欠席し、民主党議員のパーティーに出て、「こちらの方が大事」と話すなど、大臣としての資質が問われていた。前局長の更迭後、参議院の委員会で、1995年の米兵による少女暴行事件について質問を受けた一川防衛相は「詳細には知らない」。この答弁にもびっくりした。
政権交代して2年。沖縄は民主党政権に翻弄され続けた。鳩山元首相が強弁した「最低でも県外」。辺野古移設を否定しながら、結局、辺野古に戻ってしまった。この普天間問題の大きなきっかけとなったのが95年の暴行事件。沖縄県民には大変なショックだったが、県外の多くの国民も衝撃を受けた事件だ。
今、防衛省にとって最も重要な課題の一つが普天間問題だ。にもかかわらず、そのトップがきっかけとなった事件について「知らない」という。開いた口がふさがらない。
沖縄県知事にお詫びに防衛相が行ったものの、わずか8分間の会談で終わってしまった。
県会議長は涙ながらに抗議文を防衛相に手渡した。防衛相は知事や議長をはじめとする沖縄県民の気持ちをどうとらえたのだろう。
5日に行われた衆院予算委員会の集中審議。野田首相は「適材適所」として防衛相を擁護してきたが、予算委では「これまで以上に襟を正し職責を果たしてほしい」と罷免要求を拒否した。当事者の防衛相も自らの辞任を否定した。
会期末には防衛相の問責決議案が自民・公明から出される方向だ。いずれにしても将棋で言えば防衛相はもう詰んでいる状態。辞めるのが一日延びれば延びるほど、沖縄の怒りが増幅される。
戦後66年の沖縄の人々の痛み苦しみを少しでも感じるならば、即辞任が当然だ。
(平成23年12月7日付 「夕刊フジ」より転載)