連載109 首相が国民生活に増税シュート


 
 
首相が国民生活に増税シュート
 
 
 
 
 
W杯も気になるが・・・・消費税争点の選挙も
 
 
 参院選が明日24日に公示される。だが、世の中は選挙よりもサッカーW杯の方が関心が高い。

 民放各局の朝の情報番組。昨年の衆院選や3年前の参院選は公示前から各党横並びの討論が活発に行われた。ところが、14日のカメルーン戦に日本が勝利すると、情報番組の多くはW杯に時間を割き始めた。参院選の話題はごくわずかだ。

 日本が決勝トーナメントに進出できるかの大一番のデンマーク戦が公示日翌日(25日)の午前3時半にキックオフ。各党党首の第一声のニュースも、デンマーク戦絡みの話題にさらわれそうだ。
 しかし、今回の参院選は菅首相が「消費税10%」に言及し、「消費税」が最大の争点になりつつある。しかし、菅首相の発言や民主党幹部の説明を聞くにつけ、少々乱暴な論理展開と感じる人も多いのではないか。連立を組む国民新党の亀井代表は「断じて賛成しない」と早々に反対を表明。民主党内からも反発が渦巻いている。

 17日の記者会見。菅首相は自民党が提示した消費税10%を「参考にする」と発言したが、同日発表の民主党マニフェストは、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」としか書かれていないのだ。マニフェストに表記せず、「発言」で重大なことを表明するのは、普天間基地問題で鳩山前首相が失敗したのと同じ手法だ。

 また、昨年の衆院選で民主党はマニフェストの財源は総予算を組み替えれば捻出できるので、消費税増税は4年間必要ないと訴えていた。しかし今回の消費税増税の“公約”は「あのマニフェストは間違っていました」という意味に他ならない。

 そもそもなぜ「10%」なのか。根拠がはっきりしないのも問題。財政再建のための借金返済なのか。バラマキ・マニフェストのための財源なのか。菅首相は「強い社会保障」とも言った。しかし、その具体像は示されていない。年金、介護、医療といった社会保障の具体的ビジョンと、そのために必要な金額はどれくらいなのか。さ
らにムダを削って、新たに国民に負担をお願いするのはいくらなのか。そこで初めて税率の話が出てくるのではないか。
 W杯の行方も気になるところだが、今回の参院選は「国民生活」に強烈なシュートが飛んできたようなものだ。

 雰囲気でなく論理的な各党の議論と、冷静な国民の判断が求められる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成22年6月23日付 「夕刊フジ」より転載)
 
 

2017年02月20日