連載124 政府の子ども手当法案は法律違反だ
政府の子ども手当法案は法律違反だ
民主党が迷走している。小沢一郎元代表に近い衆院議員16人が会派離脱を表明。菅政権は内部から崩壊し始めている。今国会の焦点は予算関連法案の成否だが、会派離脱を表明したメンバーは採決で造反する可能性を示唆した。
注目されている法案の一つに「子ども手当」法案がある。元々は公明党が党をあげて推進してきた「児童手当」だ。
1967年、千葉県市川市で始まった。その後各自治体で広がり、公明党が国としてやるべきだと主張して71年に児童手当法が成立。翌年1月から国の制度として給付がスタート。
公明党が連立政権に参加した99年当時、児童手当は3歳未満の支給で対象は240万人だった。その後4回にわたって法改正を行ない、対象も小学6年まで拡大。支給児童数は1290万人にまで増えた。ところが、この4回の法改正に全て反対した唯一の政党が民主党だった。
政権交代時の民主党マニフェストは、子ども手当について中学3年まで月額2万6000円、全額国が負担し、児童手当法は廃止するとしていた。「子ども手当と児童手当は理念が違う」と民主党議員はTVなどでも話していた。
だが、民主党政権が昨年、提出した法案は児童手当法を残し、地方と企業の負担をそのままにし、上積み分だけ国費をあてる内容。しかも一年限りの時限立法で、まさに児童手当の拡充にほかならなかった。
公明党は、現金給付だけでなく、2011年度以降は保育所の整備など「全般的な施策の拡充をしていく」という修正を加え賛成した。ところが今回出てきた法案は相変らず一年だけの時限立法。しかも他の施策の拡充もない。つまり、昨年の法律に違反した内容になっている。
「法律違反の法案には賛成できない」というのが我が党のスタンスだ。
さらに今年までに子ども手当法は財源を明確にした恒久法にするとしていたが、その約束も破られた。
公明党の坂口力元厚労相は「恒久法にしなければ話にならない」と主張するが、それを聞きつけた厚労省の官僚が坂口さんの所へ訪ねてきた。
その官僚は「恒久法は厳しいです。今の月額1万3000円で恒久法にしてしまうと、マニフェストの月額2万6000円を諦めたことになります。民主党内には2万6000円と言う人もいれば、中には1万3000円でいいという人も。恒久法では党内がまとまりません」。
ここはいったん、白紙に戻して本当に必要な子育て支援は何かを民主党は考え直したらどうか。だが、党内のゴタゴタで冷静な政策議論もできなくなっている民主党にこの国を運営するのは無理かもしれない。
(平成23年2月22日付 「夕刊フジ」より転載)