連載5 子供が安心して街を歩けるように


 
子供が安心して街を歩けるように
 
 


 
 
これは大人の問題だ
 
 いやな事件が相次いでいる。広島と栃木で小学1年の女児が、下校途中に行方不明になり殺害された。日本の安全神話はもはや崩れてしまったのか。
 
 私も3人の子を持つ親として、他人事ではない。被害女児の親御さんのことを思うと、いたたまれない気持ちになる。
 
 わが家の場合、中3の長男、中1の長女。末っ子は小学2年生の男の子だ。幸いにも小学校が自宅の目の前にあるので、登下校の距離も短い。
 
 少しは安心だが、危険は通学時だけではない。帰宅してから友人の家へ遊びに行くのだから、戻って来るまで心配だ。
 
 防犯ブザーを持たせているが、それもいざというとき、役に立つのか。子どもが遊ぶとき、大人がずっとついていなければ、もう子どもを守ることができないのか。
 
 先日、中3の長男の帰宅が遅くなった。期末試験のため、帰宅時間が通常より早いはずだった。夕食の時間になってもまだ戻らない。
 
  「いつもクラブで遅くなるときなどは電話してくるはずなのに・・・」。妻は2つの事件の直後だっただけに、心配がつのったという。
 
  「ただいま」。午後7時半ごろ、長男が帰ってきた。「何していたの。心配したのに。連絡もないし」。妻は長男に語りかけると、「友だちと話していて遅くなっちゃった」。あっけらかんとしている。
 
 本来であれば、長男の言動の方が普通のはずだ。そんな日本だった。ある新聞に書かれていた「日本の子供は天国」というモース(明治初めに来日した米国の動物学者)の言葉が印象的だ。
 
 彼が見た日本で、社会が子どもを大切にし、朝から晩までニコニコ遊びまわっている子どもたちを表した言葉だそうだ。
 
  私も小学生のころ、あたりが暗くなるまで遊んでいた。あのころ、帰宅が遅くなると、母から「人さらいに連れていかれるよ」と注意された。だが、それもあまり現実味がなかった。
 
 今は違う。このような事件は2度と起こしてはならない。これは子どもの問題ではない。大人の問題だ。社会の病巣を解明し、子どもが安心して街を歩ける国にしなければならない。政治もこの問題を一過性でとらえるのではなく、重大な社会問題として政府をあげて対応しなくてはならない。
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成17年12月13日付 夕刊フジより転載)
 

2017年02月20日