GWに実感した家族愛
子供たちは私の背中をどう見てくれているか
トラの檻(おり)の前だった。
通勤電車のような混雑。小学校に入学したばかりの長男(6歳)、年中組の長女(4歳)の手をそれぞれギュッと握りしめた。だが、後ろからの圧力に一瞬、その手が離れた。人混みに流され、子どもたちが消えた。
「秀幸~い!」「美咲~い!」
私は叫びながら、子どもを探した。長男はすぐに見つかった。が、長女の姿は――。
ゴールデンウイーク(GW)が始まる。家族旅行など計画を立てている人も多いと思う。今年は高速道路料金の引き下げなどもあり、各地の高速道路も平年以上の混雑が予想される。
ゴールデンウイークでは忘れられない出来事がある。今から12年前。2期目の挑戦の衆院選で落選した翌年だった。
記者時代も議員になってからも、家族サービスとは無縁に近かった。
久しぶりに子供たちとの時を過ごそうと、上野動物園に行くことに。妻は3人目の子の出産直前のため留守番。それでも3人分のお弁当を早起きして作ってくれた。
動物園は入り口から大変な込み具合。パンダ舎の前では2人の子供が「かわいいー」と声をあげていた。
そして冒頭に述べたトラの檻の前。まるで「安寿と厨子王」みたいだ。見つけた長男の手をもう一度握りながら、長女の名前を叫ぶ。長男も一緒になって声を出した。
トラ舎の混乱を抜け、周辺を探しまわるが見つからない。「迷子が集まってるかもしれないから、管理事務所に行ってみようか」と長男に言うと、心配そうな顔で小さくうなずいた。
しばらく歩いていくと、動物園の職員と手をつないだピンク色のウインドブレーカーを着た女の子。向こうも気づいたみたいだった。泣きながら駆けよってきて、私の胸に飛び込んできた。娘は涙で声にならない。心配そうな顔の長男に笑顔が戻った。
親が子を思う気持ち。それは血のつながりなのだろうか。最近も親が子供を虐待したり、死に至るような事件があった。そんな悲しい事件は防げないものか。子供は親の背中を見て育つという。あれから12年。子供たちは私の背中をどう見てくれているか。
家族を大切にするのはあたり前だが、その愛情や思いやりを家族以上に他者に振り向けられるか。政治家として問いかける日々だ。
(平成21年4月29日付 夕刊フジより転載)