連載17 最後の”詰め”は? 首相は会期延長せぬ理由を示せ


 
最後の“詰め”は?
首相は会期延長せぬ理由を示せ
 
 

 
 
両議院がきめるもの
 
 サッカーのW杯ドイツ大会が始まった。日本の初戦となるオーストラリア戦も今晩(12日)午後10時にキックオフされる。
 
 明朝はTVや新聞だけでなく、職場でもこの初戦の話題でもちきりとなるだろう。皆さんの周りにも、即席の“サッカー評論家”であふれるに違いない。かくいう私も、即席の部類だが。
 
 様々なスポーツの中でもサッカーはちょっとした油断が禁物の種目。忘れられないのは93年の10月28日の「ドーハの悲劇」だ。翌年のW杯アメリカ大会へのアジア地区最終予選。カタール・ドーハで行われた日本対イラク戦だった。深夜の放送にもかかわらず、視聴率は48・1%。私も眠い目をこすって見入っていた。
 
 2―1で日本がリードし、W杯初出場が確実だった。ところが、後半のロスタイム。イラクのコーナーキックから日本は失点し、引き分けに持ち込まれ、念願のW杯初出場が消えてしまった。
 
 最後の“詰め”がいかに大切かを教えられた試合だった。
 
 最後の“詰め”といえば小泉首相もそうだ。就任して5年、今年9月に任期切れとなる。小泉政権にとっては、今開かれている通常国会は実質、最後の国会となる。
 
 ところが、18日に会期末を迎えるこの国会を、小泉首相は延長しないと明言した。このため、重要法案は山積みされたまま秋の臨時国会に継続審議となりそうだ。
 
 だが、そもそも国会の会期は、立法府の両議院が決めるもの。行政府の長たる首相の権限ではない。議院内閣制のわが国は与党自民党の総裁が首相を務めているので、「自民党のトップとしての判断だ」とすれば、それも一理あるが…。
 
 しかし、与党は自民党だけではない。わが公明党と連立を組んだ政権のはずだ。安倍官房長官と自民党の武部幹事長が7日、会期延長をしないことを確認したとする報道を受け、わが党の神崎代表は「(延長問題は)与党間で来週、決める申し合わせをしており、誠に遺憾だ」と述べた。
 
 
先送りは無責任

 秋の臨時国会は「ポスト小泉」の新首相の下で進められるとみられる。その臨時国会に先送りされる重要法案は、教育基本法、国民投票法、組織犯罪処罰法など。議員立法の国民投票法案をのぞけば、すべて政府が提出した法案で、閣議で小泉首相をはじめ閣僚が署名をして提出している。
 
 それにもかかわらず、自ら出した法案に決着をつけず、次の人に任せるというのは、無責任といわれてもしかたがない。
 
 “改革”を推し進めた小泉首相と評価されるか。最後の“詰め”を誤って、厳しい評価を受けるか。
 
 小泉首相は、延長しない理由を国民に説明しなければならない。
 
 
 
 
 
 
 
 

(平成18年6月13日付 夕刊フジより転載)
 
 


2017年02月20日