日本を公務員天国ギリシャにするな
ギリシャのゴタゴタで世界が揺れている。フラス・カンヌで開かれたG20首脳会議でも、ギリシャ危機を封じ込める首脳宣言が採択された。
今から2年前の09年10月。ギリシャでも政権交代があり、前政権が財政赤字を過少に計上していたことが明らかになった。ギリシャの債務返済能力が疑われ、ギリシャ国債の格付けが引き下げられていった。
人口1100万人で、GDPの7割が観光というギリシャ。公務員天国と言われ、財政赤字の中、給料はこの10年間で40%近くアップ。さらに年金も現役時代の報酬の8割もらえるというからすごい。
今後、財政赤字がさらに悪化し、ギリシャ国債が債務不履行に陥ったら、欧州各国の金融機関が大打撃を受け、リーマン・ショックを上回る金融危機になると言われている。
欧州各国は危機回避のために、ギリシャ国債元本の50%削減やギリシャ国債を保有する銀行の資本増強、欧州金融安定基金の拡充策などの支援策を打ち出した。一方で当事者のギリシャも財政再建のための公務員給与の削減や、年金の抑制を打ち出したものの、国民の反発を受け混乱。パパンドレウ首相は国民投票で信を問うと一時表明するが、それも断念。まさに、ギリシャに世界が振りまわされている。
周辺の国々から財政支援を受けながら、自分たちは身を切ることもしない。支援国から見れば、「いったい何をやっているんだ」という気持ちだろう。
だがギリシャの混乱も他人事ではない。日本の財政もかなり厳しい状況だ。
国会では東日本大震災の復興のための第3次補正予算の審議中だ。財源としての復興増税をどうするのか。その上、野田首相はG20で、来春の通常国会に消費税アップの法案を提出すると明言した。
ちょっと待ってもらいたい。財政の厳しい中、国民に負担を求めることは分からないではない。だが、その前にやることがあるはずだ。消費税の使い道として考えられる社会保障はどうするのか。「社会保障でこれくらいかかるので、足りない分をこれだけ負担してください」というのが筋だが、今の政権はそれを明らかにしていない。
また、ムダを徹底的にはぶいたのかということも大切だ。ギリシャは公務員に甘かったが、日本はどうか。例えば公務員宿舎。2年前の事業仕分けで朝霞宿舎の建設が凍結されたが、いつのまにか復活。世論の反発を受け再び凍結と迷走している。
現在も行われている財務省の公務員宿舎削減の検討会の議事録を読むと、どうも宿舎存続の雰囲気を感じてしまう。
ギリシャにならないためにも、公務員天国にしてはならない。
(平成23年11月9日付 「夕刊フジ」より転載)