菅首相は社会人として問題あり
前原外相が辞任した。今年1月、内閣改造をした菅首相は「最強の布陣」と胸を張ったが、その内閣が揺れている。
閣僚の辞任は不祥事のほかに「失言」で辞めていく場合もある。だが、一昔前の「失言」は憲法や歴史など政治的問題に関する発言で野党は追及したように思う。
ところが、民主党政権のトップの発言は、政治家以前の社会人としていかがなものかと感じる国民は多いのではないか。
菅首相と鳩山前首相の発言で共通するのは〝責任転嫁〟だ。鳩山前首相は「政治とカネ」の問題や普天間基地移設問題で辞任をした。その辞任表明の民主党両院議員総会で「国民の皆さんが聞く耳を持たなくなってしまった」と述べた。なぜ国民が聞く耳を持たなくなったのか。それは鳩山氏の言動が原因ではないか。それを理解しない国民が問題だと語る前首相は、その後も「方便」発言など「迷言」を続けている。
バトンを渡された菅首相。昨夏の参院選で民主党は与党過半数割れの惨敗。直後の会見で「消費税に触れたことがやや唐突な感じを持って国民に伝わった」と菅首相。「やや唐突」どころではない。前年の総選挙では「4年間、消費税を上げない」と訴えて政権交代したのは民主党だったではないか。参院選の半年前、当時財務相だった菅首相は衆院予算委員会で「もうこれ以上逆立ちしても鼻血が出ないというほど、完全に無駄を無くしたと言える時に必要であれば必要な措置(消費税増税)をとる」と答弁。国民が理解してもらうように発信するのは政治家、政党の責任だ。ここでも、第三者的な発言で責任回避している。
最近では先月24日の衆院本会議。民主党がマニフェストで子ども手当の支給額を月額2万6000円にしたことについて、菅首相は、「この議論がなされた小沢代表当時、2万6000円と聞いて一瞬ちょっとびっくりしたことを覚えている」と話した。本会議場にいた私はそれこそ首相発言に「びっくりした」。当時の菅首相は代表代行。責任を負う立場にも関わらず、2万6000円は小沢さんが提案したのだからとここでも責任回避の姿勢をにじませた。
国会では2011年度予算案が衆院を通過したが、予算関連法案は成立の目途は立っていない。菅首相は先月23日の党首討論で「予算が執行できないと景気に水を差す」と野党をけん制した。しかし、昨夏の参院選でねじれ国会となり野党が年度末で予算関連法案に反対することは分かっていたはずだ。それを放置して、野党も賛成せざるをえないように手を打つのは政府与党の責任のはずだ。
何か問題があると人のせいにする。政治家というより、社会人として問題ありのトップはお辞めになるしかない。
(平成23年3月8日付 「夕刊フジ」より転載)