連載107 施行された「国民投票法」使えない”異常”状態の立法府



  
施行された「国民投票法」使えない“異常”状態の立法府
 
 
 
 
 
 「悪法も法なり」
 
 ソクラテスの言葉といわれる。現代にあって、「悪法」でもないのに、施行されたにもかかわらず、使うことの出来ない法律がある。18日に施行された国民投票法だ。

 憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立したのは2007年。施行まで3年で準備しなければならなかった課題が解決しないまま時が過ぎてしまった。
 まず、憲法改正原案を審議する場として衆参両院に設けられた憲法審査会がスタートできない。参院はその規定すら作らず、規定のある衆院でも委員が選ばれていないのだ。

 また、国民投票法は18歳以上に投票権を認めた。同法の施行までに、公職選挙法や民法の成年年齢の「20歳」を改めるよう「必要な法制上の措置を講ずる」と国民投票法の付則で定めた。さらに、法相の諮問機関の法制審議会も昨年7月、成年年齢の18歳引き下げの報告書をまとめた。だが、公職選挙法も民法も改正論議がまったく進んでいない。
 憲法審査会が“開店休業”状態になっているのは、民主党の消極姿勢と、連立与党の社民党の反対によるところが大きい。
 鳩山首相は05年に「新憲法試案」を発表。小沢幹事長も自由党時代、「日本国憲法改正試案」(1999年)を発表している。ところが民主党内には「改憲」「護憲」の両派が混在し、昨年9月には党憲法調査会が廃止され、憲法論議を封印してしまった。
 一方、護憲を掲げる社民党だが、議論さえしないというのはいかがなものか。

 憲法改正は両議院の3分の2の賛成で国会が発議できるが、最終的には国民投票で決める。議論を避けるということは、最終決定者の国民を信頼していないか、自らの主張を国民に納得させることができないと言っているようなものだ。

 夏の参院選が近づき、国会は政局がらみの話題になりがちだ。しかし、選挙とは関係なく「国のかたち」をどうするか、腰を据えて論議するのも国会の仕事ではないか。

 立法府で作った法律を立法府が“異常”な状態にしたままでは、今後どんなに良い「法」を作っても「悪法」よりも劣ってしまう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成22年5月26日付 「夕刊フジ」より転載)
 
 

2017年02月20日