連載4 耐震偽装 現場で深刻さ痛感






耐震偽造 現場で深刻さ痛感
 
 
 

 
一見普通の建物だが
 
 マスコミを騒がしている「耐震強度計算書偽造問題」。今、帰宅途中でこのコラムを読んでいる皆さんにとっても、他人事ではないのではないか。ようやく手に入れたマンションが、震度5強程度で倒壊する恐れがある。「とんでもない!何でうちのマンションが・・・」と思うのが当然だろう。
 
 先週の木曜日。公明党の「耐震構造設計偽造問題対策本部」のメンバーとして、墨田区内のマンションを緊急調査に訪れた。
 
 それは下町の住宅街にあった。11階建てのマンションで、一見して何の変哲もない建物。そのマンションの管理組合理事長に話を聞いた。
 
 「今すぐにでも(マンションから)出ていきたいが、どこまで補償されるのか分からない状態では(出るのが)恐い。ローンも残ってるし・・・」
 
 嗚咽をこらえるのがやっと、という雰囲気だった。
 
 そして、何度もマンションの前に立って見上げてみた。繰り返すが、素人の目にはまったく普通の建物だ。
 
 同行した国交省の担当者に聞くと、「上の階より、下の階の方に鉄筋が多く入ってないと重さに耐えられない。しかし、下の階も上の階鉄筋は同じ数」ということだった。 つまり、地震などで下の階がつぶれてしまう可能性が大きい。
 
 10年前の阪神・淡路大震災。1年生国会議員だった私は現場に駆け付けた。途中の階がつぶれたり、傾いたビルを何棟も見たことを思いだした。
 
 
「寝るのが不安」・・・震える住民

 少し暗いエントランスで住民の代表2人が、調査に訪れた私たちに語ってくれた。
 
 「いつ地震が来るか分からない」「いつ倒れてもおかしくない建物で寝ているのが不安」。言葉が震えているのが分かる。「家族も食事がのどを通らない」「家内が倒れてしまった」
 
 テレビや新聞の報道で少しは事情を分かっていたつもりだったが、予想以上の深刻さに認識の甘さを痛感、自分が恥ずかしかった。
 
 「事件は現場で起きている!」。数年前にヒットした映画の主人公のセリフだ。
 
 住民の気持ちのすべては分からないかもしれない。だが、現場に足を運び、苦しんでいる人の声を聞くことから、政治家の行動は始まる。
 
 住民の安全確保や転居費用の問題、そして倒壊防止や取り壊しはどうするか。さらには建築確認の制度問題など、早急に政治が取り組んでいきたい。
 
 
 
 
 
 
 
 

(平成17年11月29日付 夕刊フジより転載)
 

2017年02月20日