マスコミの「政党離れ」にはウンザリ
知事選結果で即断
そのまんま東氏、いや東国原英夫氏が今月21日の宮崎県知事に当選した。
選挙翌日の新聞には「『政党離れ』波乱の兆し」(朝日)、「政党不信の嵐」(読売)、「政党の威信失墜」(毎日)、「政治不信2大政党直撃」(産経)―といった、見出しが躍った。テレビのニュースも同様のトーンで報道していた。
今回の知事選では元官僚の候補2人をはじめ5人が出馬。東国原氏が2位に7万票余りの大差をつけて圧勝した。
翌日、各社の記者が私に取材に来た。「平成7年のような(東京・大阪の知事選の)青島・ノック現象でしょうか?」。
マスコミの「政党離れ」という固定観念にいささかうんざりした。
私の考えを述べたい。まず保守王国の宮崎で、保守が分裂したことが大きい。2位と3位の候補の得票を足せば、東国原氏の得票を上回る。有権者が保守の「内輪もめ」をどうみたか。
今回は官製談合事件で前知事が逮捕されたことによる出直し選挙。「官」に対する不信がある中で、官僚OBを擁立するという認識の甘さが、有権者の反発を招いていると思う。
さらに、何よりも東国原氏の「真剣さ」「必死さ」が有権者に伝わったのではないか。約80項目のマニフェストを掲げ、芸能人の応援を断り、パフォーマンスではない地道な運動を行った。投票前のテレビでの各陣営のルポを見た。有力3人のうち東国原氏が最も一生懸命に動いているように感じたのは私だけではあるまい。
その他、さまざまな分析はあるだろう。統一地方選、参院選を前に、政党として有権者にどう対処していくか。考えなければならない点は多々ある。しかし、一つの知事選の結果で、すぐに「政党離れ」と結びつける思考はいかがなものか。なお、同日行われた愛媛県知事選は自・公推薦、社民支持の現職が圧勝している。
投票日の夜、関西テレビが制作した番組「発掘!あるある大辞典Ⅱ」が捏造(ねつぞう)事件で放送を休止した(その後、打ち切り)。同番組は「結論先にありき」でデータやコメントをそれに合わせて捏造してしまったようだ。
記者出身の私は、「政治報道も、結論からスタートした取材は気をつけなければならない」と痛感した。
(平成19年1月30日付 夕刊フジより転載)