小選挙区制の「限界」
英国総選挙で見えた
「いったい、誰が勝ったのか」
6日の英国総選挙(定数650)。結果が判明後、BBC放送の司会者が冒頭の言葉を漏らした。
英国総選挙は与党・労働党が大きく議席を減らして258の第2党に。13年ぶり政権交代を目指した保守党が306議席と第1党の座を獲得したものの、過半数を制することができなかった。どの政党も過半数がとれない「ハングパーラメント(宙づり議会)」となったのは36年ぶりのことだという。
英国総選挙については、各新聞が様々な分析をしているが、「英国民は労働党に幻滅したが、保守党を信じ切れない状態でもあった」(読売新聞8日付朝刊)という解説は、「わが国の政治状況にもあてはまる」と感じる人も多いのではないか。
翻って日本の政界は―。昨夏の衆院選で政権交代をした民主党。普天間基地移設問題での迷走や、けじめをつけない「政治とカネ」の問題。さらに高速道路料金の政府と党の意見対立など、多くの国民は今の政権の統治能力に疑いの目を向けている。一方、野党第一党の自民党は離党者が続出し、政権奪還への気概が伝わってこない。マスコミ各社の世論調査の結果がそれを物語っている。
2大政党制は、政権党がダメな場合、野党がそれに代わって政権を担っていく。新たに担った政権党がダメなら再び交代するはずだが、下野した政党が立ち直れていない場合、国民はどの政党を選べばよいのか。完全小選挙区と2大政党制本家の英国。今回の総選挙結果が、その制度の「限界」を印象づけた。
小選挙区制では最高得票の1人しか当選しないため死票が多く、英国でも「不公平さ」が指摘されていた。日本でも小選挙区の場合、大半の当選者は選挙区の有権者の2割から3割の得票率で当選。残る7、8割の有権者の民意は議会に反映されないことになる。
小選挙区制度の導入を決めた細川連立内閣。1993年8月、細川首相は衆院本会議で政界再編後の形として「穏健な多党制」と表現。1年生議員として議場にいた私は、細川首相の言葉が忘れられない。夏の参院選を前に新党が次々と誕生し、民主、自民に飽き足らない有権者を意識して「第3極」争いが過熱している。
先日、ベテランの政治ジャーナリストと対談した。「小選挙区制によって政治が小さくなった」という言葉が胸に突き刺さった。選挙制度を見直さねばならない。
(平成22年5月12日付 「夕刊フジ」より転載)