「常人と違う」首相の言語能力
普天間は「5月未決着」!?
この人の言葉に対する感性はどうなっているのか。多くの国民が疑問に思っているのではないか。
鳩山首相のことである。
先日、ワシントンで行なわれた鳩山首相とオバマ米大統領との非公式会談。米軍の普天間飛行場移設問題について大統領の理解を得ようと会談に臨んだ首相は、「じっくりと2人だけで話ができた」と、記者団に語った。
昨年10月の所信表明演説で「緊密で対等な日米関係」と宣言した首相。しかし、「緊密」で「対等」なはずの“首脳会談”は核安全サミットの夕食会冒頭のたった10分間しかセッティングされなかった。
報道によると、通訳をいれたため、実質的な会話は5分程度。米側の発表では、会談の中心はイランの核開発問題について。すると、「普天間」については正味1、2分程度だろうか。それでも首相は「じっくり」という表現を使った。首相の言語能力は「常人とは違う」と思うのは私だけではあるまい。
首相はこれまで普天間問題について「沖縄県民の気持ちを大事に」と繰り返してきた。ところが、首相就任以来、いまだに沖縄に足を運んでいない。沖縄に行かずして、県民の気持ちを分かるのだろうか。
1996年に「普天間基地の移設条件付返還」で日米合意してから14年。紆余曲折を経ながらも、県知事、さらに移設先の名護市長も同意するという手続きを踏んできたが、首相は「最低でも県外」と言い出し、ちゃぶ台をひっくり返したのだ。
5月末決着まで1カ月余り。その決着は絶望的との見方が広がっている。
「(普天間問題は)右へも左へも行けず、氷山に突っ込んでいる」。先日会った防衛省関係者の愚痴が普天間問題の迷走ぶりを象徴している。外務官僚の一人は、煮詰まらない移設先の政府案に対する米側の反応をこう語っている。
「生の豚肉と牛肉をそのまま出して、米側に『選んでくれ』と日本側は言っている。米側は『料理をして(地元の合意もとりつけて)出してもらわないと選びようがない』という状況だ」
「5月末」と期限を切ったのは首相本人。移設先の政府案を3月中に決めると自ら言いながら「法的に決っているわけじゃない」と前言撤回。「5月末」も法的に決ってないと逃げるのだろうか。
新聞には「5月末」という活字が目立つ。だが、「末」という字が「未」に見えてしまうほど、首相の言葉に信用がない。
(平成22年4月21日付 「夕刊フジ」より転載)