連載86 「ちょっと待った」TV報道
「ちょと待った」TV報道
温暖化対策で
テレビの影響力は怖いなと感じた。
11日朝、TBSの番組「みのもんたの朝ズバッ!」での一コマだった。
前日夜に麻生首相が発表した温室効果ガス削減の中期目標に関するニュース。「中期目標 家庭頼み」という見出しの朝日新聞の記事を参考に伝えていた。中期目標実現のためには「7割以上が太陽光発電を設置」「5割がハイブリット車などを選ぶ」とのフリップも示された。
ハイブリット車について、みの氏は「税制優遇だとかいろいろやっているよね」と、温暖化対策の政府の政策を紹介したが、太陽光発電に話が移ると、コメンテーターで毎日新聞OBの嶌信彦氏が次のようにコメント。
「太陽光とかね、自然エネルギーを使うような施策をどんどんやっておけばよかったんですよね。(日本も)これからそういうことをやらないと減らないということですね」
それに対して、みの氏は、「太陽光の発電なんかもさぁ、余った電気ね、電力会社が少しいい値段にしてもらって買い取ってもらいたいね」
「そういうことも多分、制度として導入せざるを得ないでしょうね」と嶌氏が答えた。
このやりとりを聞いていて、「ちょっと待てよ」と思った。太陽光発電を推進するため、自宅で余った電気を現在の2倍で電力会社が買い取る法案が、その日の午後、衆議院で可決される予定だった。法案は今年3月に国会に提出され、すでに報道されている。また太陽光パネルの設置についても、本年度予算で助成制度が導入している。
視聴者の中には、今回の中期目標は負担だけ増え、太陽光発電の普及についても、そう簡単ではないと思ったかもしれない。だが、麻生首相の発表前に、政府は温暖化対策について様々な手を打っており、コメンテーターをはじめ、番組関係者は、その事実を知らなかったのか―。
それを知りながら、背景を報道しないとしたら“偏向報道”だ。一方、知らないで報道しているならば、論外だ。
前の週ではマスコミ各社は「90年比7%減」で決定のような報道があった。そこから1%減を積み上げたが、それには斉藤鉄夫環境相の「粘り」があった。
たかが1%かもしれないが、1%は地球の未来にとっては重要な一歩なのだ。テレビ報道はその意味もしっかり伝えてもらいたい。
(平成21年6月17日付 夕刊フジより転載)