試験官は冷静な判断を
千葉7区で補選 政治家の“入社試験”
4月も半ばが過ぎた。今春、社会人になったばかりの新入社員は職場に慣れただろうか。この季節は異動も多く、職場の顔ぶれも変わり、フレッシュな雰囲気があふれているのではないか。
私も毎日新聞に入社した時、緊張しながら新入社員研修を受けたものだ。その後、毎年、後輩が入ってくると、「そもそも記者とは…」などと、生意気なアドバイスをしたことを思い出す。
会社は毎年、入社試験・面接などで、必要な人材を確保するが、国会には定期的な新入社員のシーズンはない。国会議員にとっての入社試験は選挙だから、毎年、春になっても顔ぶれは変わらないのだ。
今、衆院千葉7区で補欠選挙が行われているが、補選はあくまでも異例。昨秋の総選挙で480人が当選した。その中には「小泉チルドレン」と呼ばれる83人の「新入社員」も誕生。わが党も2人の「新入社員」を迎えた。
私たちの場合、1度「入社試験」に通っても4年に1回、「再試験」を受けなければならない。
記者時代は新入社員の感性に刺激を受けたことが何度もあったが、入社シーズンの無い国会では、議員自らが意識的に感性を磨かねばならない。その重要な方法は、有権者との接点を多くすることではないか。有権者との触れ合いの中で、今の社会の抱える問題をつかむことができると思う。
その触れ合いの延長に、私たちのいわゆる「入社試験」がある。だが、日々、有権者との接点を作ることに、多くの議員は苦労している。
選挙では党の政策はもちろんだが、候補者の主張、人柄なども理解してもらって、誰が国民の代表としてふさわしいかを選んでもらいたい。
しかし、有権者からみると、「候補者のことはよく分からない」と思っている人も少なくない。衆院の場合、1つの小選挙区の有権者は40万人前後。1人の有権者と対話して、理解してもらうのに1時間かかるとする。すると、1日10人と対話しても、選挙区の有権者全員に会えるのは100年以上かかってしまう。
だから議員はどこにでも顔を出す。駅頭での演説をはじめ、地域の祭りや盆踊り…。4月初旬、私は各地の「花見」をまわって、有権者との接点をもった。
だが、ドブ板を踏んでいても、「風」が吹くと、飛んでしまう場合もある。
選挙という入社試験。試験官でもあるあなた、冷静に判断して、「日本」という会社に必要な人材を選んで下さい。
(平成18年4月18日付 夕刊フジより転載)